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小 説

『半夏生の頃』立花れい香の日記 【中学生編】4.思春期 ①

小 説

【中学生編】4思春期 ①

小学校三年生の時、A子ちゃんのお父さんにレイプされた。

当時その意味は分からなかった。

初めのうちは誰にも知られないように両親や担任の先生が配慮してくれていたらしいのだけれど、学年が進むにつれて噂は広がり周りの大人や同級生達に知られてしまった。

いじめられる訳ではないけれど遊んでくれる友達はいない。

それでも家にいるよりは学校のほうがまだマシだった。

実家は自宅兼工場になっていて両親は小さな鉄工所を営んでいたので引っ越すことは考えてはくれなかった。

家にいれば炊事と掃除と洗濯をやらされて、工場で油まみれの部品のバリ取りをやらされて、不満げな顔をすれば叱られて、泣けばもっと叱られる。

元々口数の少ない母は私にどう接すれば良いのか分からなかっただけなのかもしれないが、何しろお酒を飲んでは暴れる父親をどうにか宥めることに必死で私のことどころではなかったのだろう。

六年生になる頃には一人で過ごす陰鬱な日々に私はほとほと嫌気がさしていた。

小学校を卒業したら私は「おばあちゃんの家に住んで、違う学区の中学校に通い週末だけ実家に帰る」ということが決まっていた。

おばあちゃんはお母さんの親で、おじいちゃんは私が小さい頃に亡くなったのでもう十年近く一人暮らしをしている。

おばあちゃんの家は実家からバスで十五分の所にあり、自転車でも四十分くらいで行き来できる距離だけれど、お父さんとおばあちゃんは仲が悪いみたいだったので、おばあちゃんはあまり家には来なかった。

「イタズラされた子」というレッテルを貼られた針のむしろのような今の生活が終われば、こんな私にも夢のように楽しい毎日が訪れるかもしれないと考えると三月の卒業式が待ち遠しかった。

四月になり私は中学生になった。

満開の桜の下に立つと淡いピンクの花びらが物言いたげにチラチラと震えながら私の足元に優しく落ちてくる。

子供と大人の中間の『思春期』という多感な季節を迎え、幼い性を持て余しながらこの舞い散る花びらのように私の心は揺れていた。

新品のセーラー服を着られるのが何より嬉しかった。紺地のカチッとした生地が気持ちを引き締めてくれる。

校則ではセーラー服の下にはスリップか体操服を着ることになっているのだけれど私はブラジャーだけを着けてその上に直接上衣を着た。

裏地のヒヤッとする感触が素肌に当たって心地よい。

二本の白いラインが真っ直ぐに胸元に向かい、えんじ色のふんわりとしたスカーフが胸の中央を鮮やかに彩る。

きちんと配列された紺色のスカートのプリーツが風にヒラヒラとなびいて私の入学をお祝いしてくれているようだった。

輝くような笑顔でお母さんと仲良く並んで次々に入っていく女の子たちを横目に見ながら、校門の前で最後の一歩を踏み出せないでいる臆病で卑屈な私の背中を一瞬吹いた強い東風が押した。

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